観想とは、ラテン語で「寺院の敷地や聖なる場所のための土地を調査すること」を意味する“contemplio”に由来し、自分の内面をみつめ、そこにある安らぎや調和とつながることを意味します。古来より、様々な社会や文化、宗教に備わっており、祈りや芸術、瞑想、身体技法などの観想的実践として伝えられてきました。観想的実践が深まると、安らぎや調和が深まるだけでなく、自分自身の内側に目が向くようになり、既存の認知の枠組みや価値観から自由になるとともに、身体と心に深く根ざした感覚や感情に気づけるようになります。そして、全てのものが相互依存的につながっていることを体験的に理解することができるようになります。一人一人がそのような体験的理解を身につけることで、個人・社会・地球全体が多様性と調和を同時に実現する道へとつながります。

 

近年、世界ではウェルビーイングにあるためのアプローチとして観想的実践をとらえ、その効果やメカニズムに関する観想研究が進められています。そこでは、伝統的な観想的実践と、現代的な科学や学問の知恵を融合することによって、頭で知的に理解した知識だけではなく、身体で体験的に理解した知恵が重要であることを明らかにすることが試みられています。

 

教育の分野においては、21世紀の新しい教育として、自らの感覚や感情に気づいて理解すること、そして、感情の扱い方を知ることで他者理解を深めるSocial Emotional Learning SEL:社会性と情動の学び)が注目され、様々な国の教育現場で実践が展開され、日本の教育現場でも具体的な方法を模索する動きが始まっています。SEEラーニングは、世界の幼児〜高校レベルの年齢層の子どもたちを対象に、こころの教育を目的として開発されたプログラムです。従来のSELが重視する要素に加えて、人間の基本的価値に根ざした倫理、トラウマ研究、相互依存とシステム思考の4つを包括しているという点において、SEL2.0とも呼ばれています。